Executive Summary
1971~1974年は、日本の「第2次ベビーブーム期」である。厚生労働省「人口動態統計」による4年間の出生数は合計 8,161,627人。1973年だけで209万人を超えた。[1][2]
2026年、この世代は概ね52~55歳に達している。
彼らはまだ「高齢者」ではない。むしろ、仕事上の経験、専門性、人脈、組織運営の知識を長年蓄積しながら、60歳前後に訪れる賃金・役割・雇用の転換を目前にしている世代である。
2025年の賃金構造基本統計調査では、一般労働者の月額賃金は男女計で50~54歳38.88万円、55~59歳39.62万円、60~64歳32.93万円だった。[3] これは個人の賃金が60歳になった瞬間に一律で下がることを意味しないが、50代後半から60代にかけて、労働市場上の評価や働き方が変化することを示している。
一方、「団塊ジュニア=余裕のある50代」という理解も正確ではない。2024年の家計調査では、世帯主50~59歳の二人以上世帯の平均貯蓄現在高は1,798万円、負債現在高は729万円だった。[4] しかし、これは二人以上世帯の平均値であり、単身者や資産分布のばらつきを代表しない。
家族像も一様ではない。2020年の50歳時未婚割合は男性28.25%、女性17.81%。1990年の男性5.57%、女性4.33%から大きく上昇した。[5] 「夫婦+子ども+持ち家」を団塊ジュニアの標準像とみなすことは難しい。
また、この世代の相当部分は、キャリアの入口でバブル崩壊後の厳しい雇用環境に直面した。政府が概ね1993~2004年に学校卒業期を迎えた層として扱う「就職氷河期」と、特に大卒者では大きく重なる。[6][7] ただし、団塊ジュニアと就職氷河期世代は同義ではない。
そして2040年、日本の65歳以上人口割合は34.8%になると推計される。[8] その頃、1971~1974年生まれは66~69歳前後となる。
DANKAI JR. INSTITUTEは、2026年から2040年前後までを「引退への移行期間」とだけ捉えない。
これは、日本社会に蓄積された巨大な経験資本を、会社中心の配置から社会の別の場所へ移し直せる時間窓でもある。
Key Findings
01|4年間で816万人が生まれた
FACT
| 出生年 | 出生数 |
|---|---|
| 1971 | 2,000,973 |
| 1972 | 2,038,682 |
| 1973 | 2,091,983 |
| 1974 | 2,029,989 |
| 合計 | 8,161,627 |
[1] 厚生労働省「人口動態統計」。出生数は現在の生存人口ではありません。
1971~1974年の出生数は4年間で816万人を超えた。総務省もこの期間を「第2次ベビーブーム期」と位置づけている。[1][2]
この人口の山は、過去の出生統計の話ではない。
大きな人口集団は、年齢を重ねるたびに、教育、就職、住宅取得、消費、管理職、介護、退職、医療、社会保障へと影響する領域を移していく。
2026年、その山が50代半ばに差しかかっている。
Analysis
ここで注意したいのは、「団塊ジュニア市場」という言葉から、同じ趣味や価値観を持つ巨大な消費者群を想定しないことである。
この世代に共通する最大の特徴は、価値観ではない。
人口ボリュームと、同じ歴史的タイミングを通過してきたことである。
したがって本研究所では、団塊ジュニアを一つのペルソナではなく、同じ時代条件を経験してきたコホートとして扱う。
02|2026年、52~55歳。まだ現役の中心にいる
FACT
2026年時点で1971~1974年生まれは概ね52~55歳である。
厚生労働省が賃金構造基本統計調査を基に整理した資料では、2023年の一般労働者の平均勤続年数は男性50~54歳で20.0年、女性50~54歳で13.9年だった。[9]
Analysis
これは「50代だからベテラン」という抽象論より重要な意味を持つ。
長期間働いてきた人の中には、
- 営業と顧客開拓
- 商品・サービス企画
- 採用と人材育成
- 部下・組織のマネジメント
- 業務改善
- 取引先との交渉
- 財務・管理
- 生産・品質管理
- IT・DX
- 業界固有の暗黙知
などを蓄積している人が相当数いると考えられる。
しかし、その能力は現在の勤務先の肩書や業務分担に埋め込まれている。
本人にとっても、
「自分の経験は、この会社の外で何に使えるのか」
が見えにくい。
本研究所では、この蓄積を今後 EXPERIENCE CAPITAL / 経験資本 という仮説概念で研究する。
HYPOTHESIS
日本で不足しているのは50代の能力そのものではなく、企業内で蓄積された経験を、別の企業・地域・社会課題へ翻訳する市場機能ではないか。
03|50代後半は「収入」と「役割」の転換点になる
FACT
2025年の賃金構造基本統計調査による一般労働者の月額賃金は次の通りである。[3]
| 年齢 | 月額賃金・男女計 |
|---|---|
| 45~49歳 | 37.79万円 |
| 50~54歳 | 38.88万円 |
| 55~59歳 | 39.62万円 |
| 60~64歳 | 32.93万円 |
| 65~69歳 | 28.53万円 |
[3] 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」。2025年・一般労働者・男女計。
男性では55~59歳の44.56万円が年齢階級別で最も高く、60~64歳では35.85万円となる。[3]
LIMITATION
これは同一人物を追跡した統計ではない。
企業規模、職種、雇用形態、継続雇用などが異なる人々を年齢階級別に比較した横断統計であるため、「60歳になれば賃金が必ず何%下がる」と解釈してはいけない。
Analysis
それでも、50代後半から60代前半にかけて、仕事上の評価構造が変わることは読み取れる。
そして変わる可能性があるのは、給与だけではない。
長年会社から与えられてきた、
肩書 / 権限 / 承認 / 仲間 / 日常の予定 / 自分が必要とされる理由
も変化する。
50代以降のキャリアを「収入問題」だけで考えると、この部分を見落とす。
必要なのは、退職後に突然新しい人生を探すことではなく、会社にいる間から次の役割を小さく持ち始めることなのかもしれない。
04|「50代は資産を持っている」は半分だけ正しい
FACT
総務省「家計調査(貯蓄・負債編)2024年」によると、二人以上世帯のうち世帯主50~59歳では、
- 平均貯蓄現在高:1,798万円
- 平均負債現在高:729万円
- 差額:1,069万円
だった。[4]
LIMITATION
この数字は、
- 団塊ジュニア一人あたりが1,798万円を持つ
- 単身50代も同じ資産水準である
- 資産格差が小さい
- 老後不安が小さい
ことを意味しない。
調査対象は「二人以上世帯」であり、平均値は高資産世帯の影響も受ける。
Analysis
団塊ジュニア向け市場を「可処分所得の高いミドル層」と一括りにするのは危険である。
少なくとも、
A|資産形成が進んだ層 B|住宅ローンや教育費等の負担が残る層 C|単身・非正規等を含む資産形成が弱い層
では、60代に向けて必要とする商品・サービス・働き方が異なる。
団塊ジュニアは巨大市場であると同時に、内部格差の大きい市場である可能性が高い。
05|消費力はまだ大きい。しかし「50代市場」は一枚岩ではない
FACT
2025年の家計調査では、二人以上世帯の1世帯あたり月間消費支出は、世帯主50~59歳で 367,643円だった。[10]
同調査の年齢階級では、
| 世帯主年齢 | 月間消費支出 |
|---|---|
| 40歳未満 | 299,100円 |
| 40~49歳 | 348,607円 |
| 50~59歳 | 367,643円 |
| 60~69歳 | 327,405円 |
| 70歳以上 | 264,332円 |
[10] 総務省統計局「家計調査」。2025年・二人以上世帯。
となっている。[10]
また、この50~59歳世帯の平均世帯人員は3.12人、持家率は87.4%だった。[10]
LIMITATION
ここでも対象は「二人以上世帯」であり、単身世帯を含まない。
団塊ジュニア本人だけの消費でもない。子どもなど他の世帯員への支出も含まれる。
Analysis
50代は確かに大きな消費主体である。
しかし、その支出を「自分のために自由に使えるお金」と読み替えてはいけない。
住宅、家族、教育、親、自身の将来など複数の支出目的が重なる年代だからである。
このため、団塊ジュニア市場では単なる高価格商品よりも、
「これからの人生に意味があると本人が納得できる支出」
が重要になる可能性がある。
旅行、学び、健康、住まい、趣味、コミュニティ、副業、地域との関係などは、消費と人生設計の境界に位置する。
06|「標準的な50代家族」は、もはや標準ではない
FACT
国立社会保障・人口問題研究所による50歳時未婚割合は、2020年に男性28.25%、女性17.81%だった。[5]
1990年は男性5.57%、女性4.33%だった。
Analysis
わずか30年で、50歳時点の家族構造は大きく変わった。
団塊ジュニア向けの商品・政策・サービスを考えるとき、
- 配偶者と相談する
- 子どもが独立した夫婦
- 定年後は夫婦で移住する
- 持ち家を夫婦で維持する
といったモデルだけを前提にしてはいけない。
単身、離別、子どものいない夫婦、親との同居、子どもがまだ学生である世帯など、ライフコースは分岐している。
これは「所属」の問題にも関係する。
家族、会社、地域社会という従来の所属単位が多様化するほど、自分が継続的に関係を持てる第三、第四の場所の価値が高まる可能性がある。
07|親の介護が「自分の問題」になる年代
FACT
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」では、要介護者等と同居している主な介護者のうち、50~59歳は16.1%を占めた。[11]
また、要介護者等の年齢が80~89歳の場合、同居の主な介護者の24.8%が50~59歳だった。[11]
LIMITATION
これは「50代の16.1%が介護をしている」という意味ではない。
介護を担っている人の側から見た年齢構成比であり、1971~1974年生まれだけを直接抽出した統計でもない。本稿では、50代が家族介護の担い手となる現実を示す最新の参考データとして扱う。
Analysis
50代の新しい働き方や地域参加を考える際、
「子育てが終わって時間に余裕が出る年代」
という前提だけでは設計できない。
本業、子ども、親の介護、自身の健康など、複数の制約が同時に存在する人も多い。
だからこそ、50代以降の新しい仕事や地域との関係には、
- 移住を必須にしない
- 月1回程度から始められる
- オンラインを併用できる
- 期間限定で試せる
- 中断・再開できる
といった可逆性が重要になる。
08|健康は「老後の話」ではなく、働き方の条件になる
50代は高齢期ではない。しかし、20代・30代と同じ身体条件でもない。
加齢に伴う基礎疾患や体力変化は、60代以降の働き方を考える際の重要な制約になる。
Analysis
ここで重要なのは、50代向け事業を「健康不安」で煽ることではない。
むしろ、
長く働き、移動し、人と関わり続けるための健康
という視点で捉えるべきである。
SECOND BASEのように都市と地域を行き来する仕組みも、移動頻度、拘束時間、宿泊、オンライン比率などを50代以降の身体条件に合わせて設計する必要がある。
RESEARCH GAP
団塊ジュニアに直接対応する最新の健康指標については、R001公開後もDataページで継続的に更新する。古い年齢階級データを現在の団塊ジュニアの健康状態として転用しない。
09|団塊ジュニアと就職氷河期は重なる。しかし同義ではない
FACT
政府は、いわゆる就職氷河期について「明確な定義は存在しない」としつつ、概ね1993~2004年に学校卒業期を迎えた者を指すとしている。[6]
内閣官房資料では、浪人・留年なく進学した場合、1971~1974年度生まれの大学卒業年は概ね1994~1997年に位置し、就職氷河期の前期と大きく重なる。[7]
一方、高卒の場合は卒業時期がそれより早く、出生年や進路によって景気局面への曝露は異なる。
Analysis
したがって、
団塊ジュニア = 就職氷河期世代
と書くのは不正確である。
しかし、団塊ジュニアの相当部分が、キャリア形成の入口でバブル崩壊後の厳しい採用環境を経験したことは重要である。
さらに、その影響は均等ではなかった。
正規雇用に入り長期キャリアを形成した人と、不本意非正規や無業を経験した人では、50代時点の所得、資産、職業経験、社会保障、自己効力感に大きな差が生じ得る。
団塊ジュニアを理解するキーワードは、
「巨大世代」であると同時に「分岐した世代」であること
なのかもしれない。
10|デジタル以前に育ち、デジタル社会の中核で働いてきた
団塊ジュニアが10代だった1980年代には、現在のインターネットやスマートフォンは日常生活に存在していなかった。
一方、30代、40代、50代にかけて、仕事と生活のデジタル化を現役として経験してきた。
Analysis
したがって団塊ジュニアを「デジタルに弱いシニア予備軍」とみなすのは適切ではない。
一方で、生成AI、SNS、オンラインコミュニティなど最新サービスへの習熟度には大きな個人差があると考えるべきである。
この世代向けサービスでは、
「高齢者向けに簡単にする」
より、
「説明なしでも迷わず使え、必要なら深く使える」
という設計が望ましい。
RESEARCH GAP
50代の最新デジタル利用率・SNS利用・生成AI利用については、調査定義を揃えた上でR002以降で検証する。
11|「地方へ移住するか」だけでは、地域との関係を捉えられない
FACT
2025年の住民基本台帳人口移動報告では、東京圏は12万3,534人の転入超過だった。[12]
東京圏への人口集中は依然続いている。
Analysis
ここから「都市の50代が地方へ大量移住する」と仮定するのは現実的ではない。
仕事、家族、住宅、医療、介護、人間関係など、都市を離れにくい理由は多い。
しかし、
移住しない = 地域と関係を持てない
ではない。
仕事、プロジェクト、趣味、学び、二地域居住などを通じて、一人が複数の場所に所属することは可能である。
この発想を本研究所では MULTI-BELONGING / 複数所属 と呼ぶ。
HYPOTHESIS
MULTI-BELONGING / 複数所属は、EXPERIENCE CAPITAL / 経験資本と同様に、DANKAI JR. INSTITUTEの作業仮説であり、確立した学術概念や検証済みの成果ではない。
12|2040年、団塊ジュニアは65歳を越えていく
FACT
国立社会保障・人口問題研究所の2023年推計(出生中位・死亡中位)では、日本の65歳以上人口割合は、
| 年 | 65歳以上人口割合 |
|---|---|
| 2025 | 29.6% |
| 2030 | 30.8% |
| 2035 | 32.3% |
| 2040 | 34.8% |
[8] 国立社会保障・人口問題研究所、2023年推計(出生中位・死亡中位)。実績値ではありません。
と推計される。[8]
2040年、1971~1974年生まれは66~69歳前後になる。
Analysis
これは団塊ジュニア研究を「現在の50代市場」の話だけで終わらせてはいけない理由である。
今後15年ほどの間に、
WORK → ROLE → MONEY → HEALTH → CARE → PLACE → COMMUNITY
の組み合わせが大きく変化する。
社会保障側から見れば「高齢化問題」である。
しかし人的資本側から見れば、
数十年かけて蓄積された経験を、会社の外へ移転できる期間
でもある。
Analysis|団塊ジュニアをどう捉え直すか
「支援される世代」になる前に、「経験を持つ世代」として見る
団塊ジュニアには少なくとも三つの側面が同時に存在する。
1|CONSUMER
大きな人口ボリュームを持つ消費者群。
2|RISK HOLDER
老後資金、健康、介護、雇用転換などのリスクを抱える生活者。
3|EXPERIENCE HOLDER
20~30年以上の職業・生活経験を蓄積した人的資本の保有者。
これまでの50代・高齢化議論では、CONSUMERとRISK HOLDERが中心になりやすかった。
DANKAI JR. INSTITUTEは、第三の側面である EXPERIENCE HOLDER を重点的に研究する。
HYPOTHESIS
WORKING HYPOTHESIS
EXPERIENCE CAPITAL / 経験資本
企業の中では当たり前になり、本人自身も価値を認識しにくくなった経験が、別の文脈では高い価値を持つ可能性がある。
| 企業内での肩書・経験 | 別の企業・地域での価値への翻訳 |
|---|---|
| 営業部長 | 新規販路開拓、営業プロセス設計 |
| 商品企画 | 新商品開発、顧客調査 |
| 人事 | 採用、評価、育成制度 |
| 広報 | ブランド設計、PR、SNS方針 |
| 経理・財務 | 管理会計、資金計画 |
| 生産管理 | 工程改善、品質管理 |
| IT / DX | 業務整理、デジタル導入 |
| 管理職 | 意思決定、組織設計、若手育成 |
DANKAI JR. INSTITUTEの作業仮説。確立した学術概念・検証済み成果ではありません。
HYPOTHESIS
問題は「経験がない」ことではなく、社内語を市場語へ翻訳する回路が弱いことではないか。
これを「経験資本の再配置」と呼ぶ。
Opportunities
この仮説が正しければ、団塊ジュニアをめぐる市場機会は、従来の「50代向け商品」より広い。
CAREER
副業、越境学習、プロボノ、社外プロジェクト、独立準備。
PLACE
二地域居住、関係人口、地域プロジェクト、第二の居場所。
LEARNING
AI・デジタル、リスキリングではなく「経験の再編集」。
MONEY
資産運用だけでなく、60代以降の収入源の複線化。
COMMUNITY
会社と家族以外の継続的な所属。
HEALTH
長く働き、移動し、人と関わるための健康。
この市場の共通項は、
「老後に備える」ではなく、「次の現役期間を設計する」
ことにある。
Risks
一方、経験資本という考え方を美化してはいけない。
第一に、すべての企業経験が別の場所で価値を持つわけではない。
大企業で成立していた仕事の進め方が、小規模企業では機能しない可能性がある。
第二に、「経験豊富な都市人材が地方を教える」という構図は避ける必要がある。
地域側にも固有の知識、関係性、歴史があり、必要なのは一方向の指導ではなく相互学習である。
第三に、団塊ジュニア内部の格差は大きい。
「経験資本を活用する」という議論だけでは、不本意非正規、失業、低所得などを経験してきた人を不可視化する危険がある。
第四に、本業、介護、健康、家族などの制約を無視して「50代はまだ働ける」と圧力をかけるべきではない。
経験資本は義務ではなく、本人が望む場合に選択できる資源でなければならない。
Strategic Implications
企業へ
50代社員を「定年まで抱える人材」と見るのではなく、社外活動を通じて経験を再編集できる人材として捉える余地がある。
地方企業へ
必要なのは必ずしもフルタイム1人の採用ではない。
マーケティング、採用、営業、財務、DXなど、特定機能を月数日だけ外部から取り込む選択肢がある。
自治体へ
移住者数だけをKPIにするのではなく、地域企業と継続的に仕事をする都市人材を増やす政策余地がある。
団塊ジュニア本人へ
「会社を辞めた後に何をするか」ではなく、
会社にいる今から、もう一つの役割を小さく持つ
という選択肢がある。
PROJECT 001
SECOND BASE
50代から、もう一つの仕事。もう一つの町。
SECOND BASEは、地方の人手不足を都市の50代で埋めるための求人サービスとして始めるべきではない。
検証したい問いはもっと人間的である。
都市で蓄積された経験資本を、移住を要求せず、地域の具体的な経営課題と接続すると、本人に「第二の役割」と「第二の所属」が生まれるか。
参加者側の価値仮説は、
Money + Purpose + Belonging + Adventure
である。
地方企業側には、
Skill + Outside Perspective + Execution + Network
を提供する。
自治体には「移住者」になる前の継続的な関係人口を生み、都市企業には社員の学習・キャリア自律につながる可能性がある。
ただし、これらはまだ仮説である。
実証しなければならない。
What We Do Not Know Yet
公開統計だけでは、以下には答えられない。
- 1971~1974年生まれ本人は「団塊ジュニア」と呼ばれることをどう感じるか。
- 会社の外に新しい役割を持ちたい人はどの程度いるか。
- 副収入、社会貢献、刺激、所属感のうち、何が実際の行動を生むか。
- 月1回程度の地域移動を継続できる人はどの程度いるか。
- 地方中小企業は外部人材のどの経験に、いくら払うのか。
- 大企業経験が地方企業で成果につながる条件は何か。
- 本業、介護、家族、健康と両立できるプログラム設計は何か。
- 性別、雇用形態、所得、資産、家族構成によってニーズはどう違うか。
- 「第二の所属」が本当に本人の幸福感やキャリア展望を変えるのか。
これらをR002以降の調査、定性インタビュー、実証実験で検証する。
Conclusion
団塊ジュニアは、「もうすぐ高齢者になる巨大世代」ではない。
少なくとも今は、
巨大な人口ボリュームを持ち、仕事・家族・資産・健康・所属が同時に転換し始める現役世代
である。
この世代が今後15年で何を選ぶかは、本人の人生だけの問題ではない。
企業の人材戦略、地方企業の経営、地域との関係、消費市場、住宅、介護、社会保障にも影響する。
だから、問うべきことは、
「団塊ジュニアをどう高齢化社会へ移行させるか」
だけではない。
日本には、まだ使われていない経験がある。
能力がないのではない。
出会う回路が足りないのかもしれない。
DANKAI JR. INSTITUTEは、その可能性をデータと当事者の声で検証していく。
Methodology
本稿では、1971~1974年生まれを分析上の「団塊ジュニア」と定義した。
ただし、公的統計の多くは5歳または10歳階級で集計されており、1971~1974年生まれだけを直接抽出できない。
そのため本稿では、
- 1971~1974年に直接対応するデータ
- 50~54歳、50~59歳等の近似年齢階級データ
- 日本社会全体の構造データ
を区別して使用した。
年齢階級データを「団塊ジュニアそのものの値」と読み替えていない。
また、出生数は当該年に生まれた人数であり、2026年時点の生存人口ではない。
FACT は公的統計等から確認できる事項、HYPOTHESIS は確認された事実から導いた検証前の仮説、LIMITATION / RESEARCH GAP は現時点で断定できない事項を示す。
Sources
[1] 厚生労働省「人口動態統計」出生数・合計特殊出生率の推移
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/10-2/kousei-data/PDF/22010101.pdf (外部資料・新しいタブ)
[2] 総務省統計局「統計トピックス No.148」第2次ベビーブームに関する記述
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/topics/topi1481.html (外部資料・新しいタブ)
[3] 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/dl/02.pdf (外部資料・新しいタブ)
[4] 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2024年平均結果」
https://www.stat.go.jp/data/sav/2024np/pdf/summary.pdf (外部資料・新しいタブ)
[5] 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」性別50歳時の未婚割合
https://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Data/Popular2024/T06-23.files/sheet001.htm (外部資料・新しいタブ)
[6] 厚生労働省「中高年の活躍支援/就職氷河期世代」
[7] 内閣官房「就職氷河期世代支援の推進に向けた全国プラットフォーム」資料
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shushoku_hyogaki_shien/ (外部資料・新しいタブ)
[8] 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp_zenkoku2023.asp (外部資料・新しいタブ)
[9] 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2023/index.html (外部資料・新しいタブ)
[10] 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年平均結果」
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2025.pdf (外部資料・新しいタブ)
[11] 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況 Ⅳ 介護の状況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa25/dl/05.pdf (外部資料・新しいタブ)
[12] 総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2025年結果」
https://www.stat.go.jp/data/idou/2025np/jissu/youyaku/index.html (外部資料・新しいタブ)